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2024年9月27日
令和6年9月院長のマンスリ−ト−ク◆昭和40年代の歯科医療−⑨国民皆保険以降の歯科医療の変遷
昭和40年代の歯科医療−⑨国民皆保険以降の歯科医療の変遷
今月は、国民皆保険以降の歯科医療の変遷について述べてみたい。
今回の数値は、平成12(2000)年1月日本歯科評論の私の論文「新世紀における社会保険歯科医療のあり方」の中のものである。健全歯や処置歯、未処置歯、喪失歯の数は昭和32年から6年おきに行われていた歯科疾患実態調査、治療の歯数は各年の社会医療診療行為別調査報告から計算したものである。
1.国民の歯牙の状況と受診状況
人口が1.16倍の伸びを示す中で、 昭和38年から50年にかけて、 乳歯の処置歯は198万歯から1,645万歯と8.8倍に、 永久歯の処置は22,597万歯から48,471万歯と2.1倍になったが、未処置歯は昭和50年で、乳歯9,212万歯(1人平均3.64歯)、 永久歯26,310万歯(1人平均2.60歯)とまだまだ多かった。
総受診件数は6,312万件から9,723万件と1.54倍に、診療実日数は27,499万回から31,257万回と1.14倍に、1件当たり日数は4.36日から3.21日へ1.15日減った。歯科医師1人当たり診療回数は昭和38年に8,057回/年が、 44年には8,522回/年、 50年には7,450回/年となった。 昭和45年頃が1歯科診療所の1日の平均患者数が45人という驚異的な数値を示した。
2.歯科医療提供体制
歯科医療費は昭和38年885億円が、 50年に5,677億円と6.41倍の伸びを示した。 しかし、歯科診療所数は27,869箇所から32,565箇所と1.16倍、 歯科医師数は34,517人から43,586人と1.26倍しか増えていなかった。 歯科医療従事者数は歯科衛生士が1,748人から11,440人と6.54倍、歯科技工士は7,515人から13,622人に1.81倍と大幅に増えていた。
ちなみに、平均寿命は男性が67.21歳から71.73歳、女性は72.34歳から76.89歳と4歳程寿命が伸びた。
有床義歯装着者数は昭和50年で1,666万人と人口の約15%という結果であった。
3.主な診療行為の推移
◎歯科用レントゲンでは、 標準型レントゲンが433万枚から2,469→3,641万枚と8.4倍になり、パノラマ(全顎)は、 2万枚→97枚→232枚と116倍となった。 恣意的に診断料・撮影料は据え置かれた。
◎処置料(歯牙疾患の処置)では、
・普通処置は13,832万回→18,056万回→7,273万回と0.52倍と即日充填処置が出てきてから、減ってきた。昭和45年頃には1歯科診療所1日平均45人となり、仮封材を引っ繰り返して詰めたということもあった。
・抜髄は1,296万歯→1,850万歯→1,875万歯と1.45倍に。
・根管充填(単根管)1,877万歯→2,606万歯→2,819万歯と1.50倍に。
・歯石除去(1顎1回につき)812万ブロック→2,081万ブロック→5,163万ブロックと6.36倍 ・盲嚢掻爬(簡単)は71万ブロック→247万ブロック→362万ブロックと 5.10倍に。
・歯槽膿漏処置は1,684万回→3,421万回→3,600万回と2.14倍に。歯槽膿漏の治療が進む。
・歯冠修復物又は補綴物の除去は700万歯→1,363万歯→1,428万歯と2.04倍に。
・調整・研磨は2,466万歯→3,241万歯→3,600万歯と1.97倍に。
◎手術では、
・抜歯術(1歯につき)では、
1.乳歯は408万本から692万本と1.70倍に。乳歯の残根の抜歯が進んだ。
2.前歯は387万本から573万本と1.48倍に。前歯の抜歯は乳歯より少ない。
3.臼歯は1,030万本から1,220万本と1.18倍に。臼歯の抜歯は前歯の2倍以上。
4.難抜歯・埋伏歯は112万本から279万本と2.49倍に。2倍以上に伸びを示す。
◎ 歯冠修復および欠損補綴料では、
・銀錫アマルガム(1窩洞につき)は2,446万窩洞から4,341万窩洞と1.77倍に。
・硅酸セメント(1窩洞につき)は214万窩洞から 364万窩洞と1.70倍に。
・レジン(1窩洞につき)は185万窩洞から1,567万窩洞と8.47倍に。
保存修復は、この当時圧倒的に銀錫アマルガム充填が主流であった。
・鋳造歯冠修復(インレ−)は845万歯から872万歯と1.03倍に。昭和50年以降に倍加する。
・帯環金属冠(5面含む)は980万歯から1,773万歯と1.81倍に。インレ−の倍になる。
・歯冠継続歯は140万歯から180万歯と1.29倍であるが、量はやや少ない。
・有床義歯(総義歯含む)は721万床から813万床と1.13倍で、昔より多く作製されていた。
・ダミ−は114万から390万と3.42倍に。ブリッジの作製が進む。
・有床義歯修理は107万から178万と1.66倍に。義歯の新製の約2割が義歯修理。
(総括)
・昭和38年から50年にかけて、 乳歯の処置歯は8.8倍に、永久歯の処置歯は2.1倍になったが、未処置歯は昭和50年で乳歯で1人平均3.64歯、永久歯で1人平均2.60歯とまだまだ多かった。
・総受診件数は1.54倍に、診療実日数は1.14倍に、1件当たり日数は1.15日減った。昭和45年頃が1歯科診療所の1日の平均患者数が45人という驚異的な数値を示した。
・歯科医療費は昭和38年885億円が、50年に5,677億円と6.41倍の伸びを示したが、歯科診療所数は1.16倍、歯科医師数は1.26倍しか増えていなかった。 歯科医療従事者数は歯科衛生士が6.54倍、歯科技工士は1.81倍と大幅に増えていた。
・歯科用レントゲンでは、標準型レントゲンが8.4倍になり、パノラマ(全顎)は116倍となったが、恣意的に診断料・撮影料は据え置かれた。
・歯冠修復および欠損補綴では、充填や鋳造歯冠修復、鋳造冠、線鉤、 鋳造鉤、バ−の頻 度が伸びたが、点数は恣意的に据え置かれた。即日充填処置(実態的には普通処置からの移行)や歯冠形成が新設・アップされたとはいえ、歯科技工に関連する修復物や補綴物の点数は上がらなかった。
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