中道歯科医院｜富山市高木　むし歯　歯周病　入れ歯　訪問診療　小児歯科　英語対応可 Availble language：Einglish,Department of Dentistry,ToyamaCity

　現行の新医療費体系は、昭和26年１月の臨時診療報酬調査会の答申に則り、昭和27年(３月と10月)に行った医療経済の実態調査に基づき（昭和29年の調査も加味）作成されたものである。新医療費体系は、本来あるべき診療報酬の体系を表現したものであり、それ自体は極めて重要な意義を持つものとされた。すなわち、医療の適正化と合理化が図られているので、専門的職業にもっぱら従事すれば、適正な報酬が得られるものである。
　それまで、物の対価と技術に対する報酬が不可分の形をとっていたものを、「物」と「技術」を分離して評価するのを主眼とした。しかし、当初、医科でも分離は充分に行われず、一応、投薬・注射及び検査の技術料と薬剤又はＸ線フィルムの範囲に限られた。
　昭和32(1957)年、新医療費体系の主眼であった「物」と「技術」の分離は、歯科ではなぜかなされなかった。ここが、歯科医療低迷の原点であった。薬価基準のように銘柄別に収載するためには、調査対象品目も多く、調査、その他準備に十分な時間的余裕がなかったというのが理由のようであるが、「官僚の不作為」そのものといわざるを得ない。
　昭和42(1967)年に金やパラジウムの大幅な値上げがあり、「物」を「技術」から分離することになったが、とりあえず口腔に残る物に限って統一品名で収載することとし、いわゆる中間材料は収載しなかった。
　「物」を「技術」から分離すると言いいつつも、今でも官僚の不作為によって分離されていないものが多い。本来、分離すべきであると考えられるものとしては、印象材、石膏製品、接着充填材料、義歯用床用材料、歯冠材料、検査材料、根管治療材料、充填用補助材料など多数ある。
　薬事工業生産動態統計調査は、統計法(昭和22年法律第18号)第２条の規定により昭和27年３月11日統計委員会委員長により指定統計第48号として指定され、統計法第３条第２項の規定により昭和27年４月１日厚生省令第10号として薬事工業生産動態統計調査規則を制定以来調査が実施されている。
　その薬事工業生産動態統計調査によれば、昭和42年の医療用具の生産額は698.2億円であった。前年と比較すると120.9億円21.0％と著増していた。昭和36年からの医療用具の生産額の推移を表１に示すが、生産金額は着実な伸び(７年間で３倍)を示していた。ちなみに、医薬品(最終製品−ビタミン剤が１位)の生産金額は5,633億円であった。

　医療用具分類別の生産金額は表２に示す通りであるが、このうち、診療施設器械装置および付属器具をはじめ上位４項目で７割を占め、順位及び構成割合は３年間同じで医療用具の中核的な存在となっていた。３位に歯科材料76億円、７位に歯科診療室用器械器具および装置33億円、11位に歯科診療用器具および技工用器械器具６億円が入っている。昭和42年の歯科医療費は1,521億円であったが、歯科の医療用具は115億円と無視できない金額である。

　昭和45年の薬事工業生産動態統計調査で具体的な品目延数として生産額をみてみる。
　昭和45年の医療用具の生産金額は1,189億5千万で、医薬品(最終製品−抗生物質製剤が１位、中枢神経系用薬が２位)の生産金額は1兆253億円とはじめて１兆円の大台に達した。
　昭和45年の歯科材料の品目延数と生産額は次の通りであった(表３)。

品目延数　　　生産額
①歯冠材料 　　　　　　　　 757品目 13億4,676万円
②義歯床材料 444品目 2億8,330万円
③歯科接着充填用材料 451品目 5億1,061万円
④歯科用印象材料 477品目 6億6,646万円
⑤歯科用ワックス 406品目 1億9,975万円
⑥歯科用石膏および耐火埋没材 557品目 4億3,916万円
⑦歯科用研削研磨材料 490品目 5億9,812万円
⑧その他の歯科材料 223品目 9,121万円
⑨歯科用金属 5,477品目 83億6,229万円
合計 9,282品目 124億9,769万円

　歯科材料以外の歯科関係の品目延数と生産額は以下の通り(表４)。

　歯科診療室用器械および装置 1,228品目 56億2,184万円
　歯科診療用器具および技工用器械器具 2,705品目 11億 237万円
　医薬部外品では、薬用歯みがき剤231億円、口中清涼剤14億円である。
　なお、この年の歯科医療費は2,448億円であった。

　薬価基準のように銘柄別に収載するためには、調査対象品目も多く、調査、その他準備に十分な時間的余裕がなかったというが、金属を除く品目延数は医薬品ほど多くないのに、本来、分離すべき歯冠材料、義歯床材料、歯科接着充填用材料、歯科用印象材料、歯科用石膏製品、検査材料、根管治療材料、充填用補助材料を分離してこなかった官僚の「不作為」は罪が深く、歯科関係の多くの人々を不幸にしてきた。
　銘柄別に収載すると、メ−カ−の自社製品に対する責任の自覚を促し、良質な歯科材料の研究開発に対する意欲を刺激し、好ましい品質競争や適正な価格競争が行われる。ＩＴ化された現在、保険点数を銘柄別に自動的にレセプトに反映できるので、事務量の増大を考慮する必要もない。
　良質な歯科医療を確保する観点からも銘柄別収載を前向きに考えていくことが必要である。