令和2年4月からの診療報酬改定の歯科の改定率は+0.59%となったが、併せて12%金銀パラジウム合金の歯科材料価格が1g2,083円に決まった。昨年10月に1g1,675円に改定され今回2,083円とついに2,000円を超える高値となった。影響率は金銀パラジウム合金の値上げで+1.325%と本体の2.2倍である。 2000年(平成12年)4月の改定で、12%金銀パラジウム合金の歯科材料価格が1g470円から510円に値上げされたとき、国際的な価格変動に対応するため6カ月ごとの見直しが決まった。2年に一度の改定時にはすべての品目について価格改定を行い、6カ月ごとの随時改定時には材料価格調査の合金素材価格の平均値補正幅(E)の変動率が±10%(後に±5%)を超えたものについてのみ改定を行うこととなった。 製造流通コストについては2年間固定される。合金素材価格はJIS規格に基づき、金12%、銀40%、パラジウム20%として算出した価格とされ、銅・亜鉛・イリジウム・インジウムなどのその他の金属の価格は製造流通コストなどに入れて計算される。R幅は、個々の取引価格の加重平均値に乗せる一定の幅で、取引条件の差異等によって発生する(図1)。
先月、平成19年から30年の歯冠修復及び欠損補綴の増減額には金銀パラジウム合金の価格が1g430円から1,458円に値上がりしている金額1,080億円が含まれていると書いたが平成18年からは表1のように19回も価格が変わってきたことになる。430円から2,083円と14年間に実に4.84倍にも価格が上がったことになる。表2は今回の金銀パラジウム値上げの影響率の計算をしたものである。
金は金色と呼ばれる光沢のある貴金属の代表で、単体として産出されるため精錬の必要がなく、装飾品としても利用されてきた。展性・延性に優れ、最も薄く延ばすことができる金属で合金とすることが容易である。Ag-Pd-Cu系合金が健康保健に使用されるようになったのは1956年(昭和31年)であり、金の含有量は2%、5%、12%へと増量されていった。金は先物取引も含め、個人からヘッジファンドなどのトレーダーに至るまで蓄財や投資の対象の一手段とされている。 パラジウムは灰白色で酸に強く、融点が高い白金族の貴金属である。炭化水素など排気ガスに含まれる有害物質を吸着する特徴があるため、自動車触媒用の用途が世界的に多い。また、電子部品のコンデンサー材料や歯科での需要も多い。歯科では、金や白金よりも少ない含有量で銀合金の口腔内での硫化を防ぐ金属として採用されている。世界市場での供給量は年間200〜250tで、ロシアと南アフリカが主産国で資源的に偏在しており、ロシアの国内事情などで最近価格変動が大きくなっている。
表3は、平成21年から30年までの貴金属商品先物(期先)年間高低の推移であるが、白金や銀はやや値下がりしているが、金は3,000→5,000円超、パラジウムは1,000→4,500円超と大幅高になっている。3月19日の税込み1g小売価格は金5,769円、白金2,572円、銀50.16円、パラジウム6,501円である。パラジウムは金より高くなっている。 金銀パラジウム合金に変わる代替材料の開発が進まない中、金銀パラジウム合金は使用すればするほど赤字になるという深刻な事態で、歯科医師からはなんとかしてほしいという悲鳴の声が聞こえており、今後の価格変動に対する不安もつきない。安定した歯科医院経営と良質な歯科医療を確保するための金銀パラジウム合金の安定的供給と、価格高騰を解決する新しいルールの確立が急がれる。
日本歯科医師会
富山県歯科医師会
富山市歯科医師会
令和2年4月からの診療報酬改定の歯科の改定率は+0.59%となったが、併せて12%金銀パラジウム合金の歯科材料価格が1g2,083円に決まった。昨年10月に1g1,675円に改定され今回2,083円とついに2,000円を超える高値となった。影響率は金銀パラジウム合金の値上げで+1.325%と本体の2.2倍である。
2000年(平成12年)4月の改定で、12%金銀パラジウム合金の歯科材料価格が1g470円から510円に値上げされたとき、国際的な価格変動に対応するため6カ月ごとの見直しが決まった。2年に一度の改定時にはすべての品目について価格改定を行い、6カ月ごとの随時改定時には材料価格調査の合金素材価格の平均値補正幅(E)の変動率が±10%(後に±5%)を超えたものについてのみ改定を行うこととなった。
製造流通コストについては2年間固定される。合金素材価格はJIS規格に基づき、金12%、銀40%、パラジウム20%として算出した価格とされ、銅・亜鉛・イリジウム・インジウムなどのその他の金属の価格は製造流通コストなどに入れて計算される。R幅は、個々の取引価格の加重平均値に乗せる一定の幅で、取引条件の差異等によって発生する(図1)。
先月、平成19年から30年の歯冠修復及び欠損補綴の増減額には金銀パラジウム合金の価格が1g430円から1,458円に値上がりしている金額1,080億円が含まれていると書いたが平成18年からは表1のように19回も価格が変わってきたことになる。430円から2,083円と14年間に実に4.84倍にも価格が上がったことになる。表2は今回の金銀パラジウム値上げの影響率の計算をしたものである。
金は金色と呼ばれる光沢のある貴金属の代表で、単体として産出されるため精錬の必要がなく、装飾品としても利用されてきた。展性・延性に優れ、最も薄く延ばすことができる金属で合金とすることが容易である。Ag-Pd-Cu系合金が健康保健に使用されるようになったのは1956年(昭和31年)であり、金の含有量は2%、5%、12%へと増量されていった。金は先物取引も含め、個人からヘッジファンドなどのトレーダーに至るまで蓄財や投資の対象の一手段とされている。
パラジウムは灰白色で酸に強く、融点が高い白金族の貴金属である。炭化水素など排気ガスに含まれる有害物質を吸着する特徴があるため、自動車触媒用の用途が世界的に多い。また、電子部品のコンデンサー材料や歯科での需要も多い。歯科では、金や白金よりも少ない含有量で銀合金の口腔内での硫化を防ぐ金属として採用されている。世界市場での供給量は年間200〜250tで、ロシアと南アフリカが主産国で資源的に偏在しており、ロシアの国内事情などで最近価格変動が大きくなっている。
表3は、平成21年から30年までの貴金属商品先物(期先)年間高低の推移であるが、白金や銀はやや値下がりしているが、金は3,000→5,000円超、パラジウムは1,000→4,500円超と大幅高になっている。3月19日の税込み1g小売価格は金5,769円、白金2,572円、銀50.16円、パラジウム6,501円である。パラジウムは金より高くなっている。
金銀パラジウム合金に変わる代替材料の開発が進まない中、金銀パラジウム合金は使用すればするほど赤字になるという深刻な事態で、歯科医師からはなんとかしてほしいという悲鳴の声が聞こえており、今後の価格変動に対する不安もつきない。安定した歯科医院経営と良質な歯科医療を確保するための金銀パラジウム合金の安定的供給と、価格高騰を解決する新しいルールの確立が急がれる。