中道歯科医院|富山市高木 むし歯 歯周病 入れ歯 訪問診療 小児歯科 英語対応可 Availble language:Einglish,Department of Dentistry,ToyamaCity
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2014年2月20日
平成26年2月院長のマンスリートーク ◆歯科インプラント手術死亡事故の教訓
◆歯科インプラント手術死亡事故の教訓
厚生労働省の2011年の調査では、歯科診療所の16.8%に当たる1万1311施設で歯科のインプラント治療行われている。1980年代に世界中に普及したインプラント治療は、日本では主として開業歯科医師による自由診療として広まり、歯科大学や大学歯学部での教育は十分に行われてこなかった。その結果、治療をめぐるトラブルも数多く発生し、国民生活センターの2011年12月の発表によると、痛みや腫れなどの症状を訴える相談が2006年度以降の5年間で343件寄せられている。
2007年5月には東京都内の歯科診療所でインプラント治療を受けた70歳の女性が手術中の動脈損傷がもとで死亡するという事故も起きた。亡くなった女性の治療を担当したのは国内有数のインプラント治療実績を誇るI歯科医師だった。業務上過失致死罪で起訴されたその歯科医師の公判を通じて浮き彫りになったのは、インプラント治療の標準化の遅れだった。
患者Aさんが初めてI歯科八重洲診療所を受診したのは2007年5月18日のことだった。Aさんは、歯科衛生士の問診を受け、歯のレントゲン写真を撮影された。その後、I歯科医師の診察を受けた。当時、Aさんは相当数の歯が欠損してかみ合わせが悪く、一部の歯は歯根だけが残っている状態だった。I歯科医師は左下顎に3本、右下顎に1本、左上顎に1本、右上顎に3本の計8本のインプラント体を埋入する手術をする必要があると判断し、Aさんに説明し、了承を得た。初診から4日後の5月22日に手術を行うことになった。 その後、Aさんは一度に8本のインプラントを埋入する手術を受けることに不安を覚えた。手術前日の5月21日に診療所に電話を入れ、手術を2回に分けるか、本数を減らしてほしいという希望を伝えた。I歯科医師はAさんの意向に従い、左下顎に4本、右下顎に1本のインプラント体を埋入する手術を行うことにした。
Aさんに対する手術は5月22日午後1時30分ころから始まった。I歯科医師は同1時54分頃から2時30分頃までに左下顎骨に4本のインプラント体を埋入した。
下顎の骨は外側が「皮質骨」という、比較的硬く、しっかりとした部分で覆われており、その内部に「海綿骨」という、骨髄が入っていて比較的軟らかい部分がある。I歯科医師は海綿骨部分でインプラント体を固定しようと考えた。そして、歯槽頂からまず直径2.5ミリメートルのドリルを、続いて直径3.2ミリメートルのドリルをそれぞれ用いて、インプラント体を入れる穴をつくるためのドリリングを行い、予定通り、皮質骨に到達する前の海綿骨の部分でドリリングを止めた。次に、その穴にインプラント体(直径4.1ミリメートル、長さ12ミリメートルのもの)をねじ込んだが、インプラント体が固定された状態とはならなかった。
そこで、I歯科医師は、海綿骨の先にある、「舌側」の皮質骨をわずかに穿孔し、これを利用して初期固定を得る方法を採ることにした。いったん入れたインプラント体を取り外し、直径2.5ミリメートルのドリルでさらにドリリングを進めて、舌側の皮質骨を意図的に穿礼した。その後、直径3.2ミリメートルのドリルで舌側の皮質骨までドリリングし、インプラント体の埋入窩をより深く形成した上で、再びインプラント体をねじ込んだ。
その後、I歯科医師は、埋入したインプラント体の上の部分に義歯を装着するためのアバットメントの取り付けを始めたが、その途中で、Aさんに異常な反応が見られたため、口の中を見ると、舌の下側の口腔底が盛り上がっていたことから、出血があったと考えた。インプラント体を取り外したところ、ドリリングした穴から出血があった。
I歯科医師が出血部分にガーゼをあて、両手の指で圧迫止血すると、1O分ほどで穴からの出血が止まった。そこで、再びインプラント体を埋入したところ、まもなく、Aさんがうなり声を上げて体をばたつかせ、やがて、その腕の力が抜けて垂れ下がった。
Aさんは午後4時頃、東京都中央区の聖路加国際病院に搬送され、さらなる救命措置を施されたが、手術翌日の5月23日午前9時18分頃死亡した。他の医療機関での手術中に容体が急変して死亡したケースであったため、聖路加国際病院は警視庁中央署にAさんの死亡を届けた。
Aさんの遺体は東京大学法医学教室の吉田謙一教授らによって司法解剖された。
Aさんの司法解剖を担当した東京大学法医学教室の吉田謙一教授と鶴見大学歯学部法医歯学研究室の佐藤慶太准教授は、Aさんの事故の1年後に開催された日本法歯科医学会第2回学術大会でAさんの事例を発表した。その内容をまとめた論文が、学会発表の翌年の2009年に発行された「日本法歯科医学会誌」に掲載された。
そこに記載された事故の問題点は以下のようなものであった。
歯科医師の救命能力に関する問題
これまでに発生した歯科医療関連死では刑事事件に発展したケースは少なくないが、刑事罰が科せられたものは僅かであり、それ以外の殆どが不起訴となっている。この理由の最たるところは、歯科診療所の医療水準が低く評されていることで、つまりは、歯科は医療水準が低いので危険予見や危険回避の義務を問えないということである。その結果、歯科診療所で発生した致命的事故は、患者を総合病院等に搬送さえすれば一義的な救命責任は果たしているようである。本件においても、担当歯科医師が執った救命行動は前述の範囲内であり、現況においては妥当性が否定されないものであろう。しかし、歯科医療関連死の多くが喉頭・咽頭の浮腫や血腫による気道閉塞等に伴う窒息が原因となっている状況を鑑みれば、外呼吸の主たる器官である口腔の疾患を担当する医療職として、将来的に歯科医師の救命スキルを格段に向上させる必要があろう。そのためには歯科界を挙げての画期的な研修体制等の構築が急務である。
インプラント術式の診療指針に関する問題
インプラント術式の標準化を考究し、診療指針を作成する必要がある。本件に観られる術式(特に切削行為)は一般歯科医学の見識からは医学適応性に疑問を抱くが、歯科用インプラント術に関する専門的な学術性による判断が必要である。しかしながら、現在のところもインプラント術に関する確固たる治療指針を確認することができず、本件がそれにある標準術式の範囲内か否かを検証することはもはや不可能である。鈴木利廣弁護士は、歯科においては診療ガイドラインが充分に存在しないため、歯科医事紛争の複雑化を招いており、近年ではインプラント術に関する訴訟が増加している点を指摘している。早急に術式を整備して、医療安全を担保したインプラント診療指針を作成し、広く歯科界に周知を図る必要がある。
インプラント術にあたっての診断技術の向上と機器類の活用に関する問題
本件においては、術前のエックス線診断として歯科用CT撮影は実施されていない。敢えて、本件に観られる下顎骨の穿孔が偶発的に生じたものとして考えると、歯科用CT画像によって細密な骨の情報を得ていれば、不測の事態を回避できた可能性が高い。本件の診療所においては、歯科用CT撮影は対応可能な状況であったようだが、一般に、高額な歯科用CT撮影装置を導入している診療所は少ないのが現状である。関連学会はインプラント術における歯科用CT撮影の重要性について説いており、歯科界としては、CT画像の安価な供給を可能とする体制を検討する必要がある。
担当歯科医師による医療関連死の届出に関する将来的な問題
本件は、搬送先病院の担当医師によって異状死として警察に届出された。これは医師法21条に規定される検案を担当医師が実施し、その際に医療関連死としての異状を認識したことに基づく行動である。現在、厚生労働省が検討する「医療安全調査委員会設置法案大綱案」においては、診療所を含む全医療機関に対して、医療関連死が発生した場合の同委員会へ届出を義務付けている。診療所で発生した死亡事案の多くは搬送先病院で確認されると考えるが、同委員会への届出は当該医療を担当した歯科医師の診断責任の範疇にある
かも知れない。又同大綱案においては、診療所で発生した死亡事案は、地域等の専門職団体に相談等の体制を設けるよう記してあり、歯科界における対応について今から考究しておく必要がある。
吉田教授と佐藤准教授らはこの抄録の最後に、インプラント手術による事故死の再発防止に向けて、①現在実施されているインプラント術式の種類、分布の程度や事故事例に関する調査、②インプラント術式の標準化のための診療指針の策定と安全な術式の普及推進、③インプラント術者に対する安全医療及び救命医療の技術修得のための専門学会等の体制確保と定期的な評価の実施、④歯科用CT撮影の具体的な必要性の明確化と機器もしくは画像を供給しやすい体制の確保の検討の4点を提言した。
歯科インプラント手術死亡事故の教訓がいかされるよう歯科界全体で取り組んでいく必要がある。
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恩師総山孝雄(ふさやまたかお)先生の教え
いつも、総山先生の教えを守るよう治療に当たっています。
富山県内での産業歯科保健事業からの成果を踏まえて
院長は、この事業の設立時から中心的役割をにない一定の成果を出しました。
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年に1回は必ず「かかりつけ歯科医」で健診することが重要と考えます。
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2007年5月には東京都内の歯科診療所でインプラント治療を受けた70歳の女性が手術中の動脈損傷がもとで死亡するという事故も起きた。亡くなった女性の治療を担当したのは国内有数のインプラント治療実績を誇るI歯科医師だった。業務上過失致死罪で起訴されたその歯科医師の公判を通じて浮き彫りになったのは、インプラント治療の標準化の遅れだった。
患者Aさんが初めてI歯科八重洲診療所を受診したのは2007年5月18日のことだった。Aさんは、歯科衛生士の問診を受け、歯のレントゲン写真を撮影された。その後、I歯科医師の診察を受けた。当時、Aさんは相当数の歯が欠損してかみ合わせが悪く、一部の歯は歯根だけが残っている状態だった。I歯科医師は左下顎に3本、右下顎に1本、左上顎に1本、右上顎に3本の計8本のインプラント体を埋入する手術をする必要があると判断し、Aさんに説明し、了承を得た。初診から4日後の5月22日に手術を行うことになった。 その後、Aさんは一度に8本のインプラントを埋入する手術を受けることに不安を覚えた。手術前日の5月21日に診療所に電話を入れ、手術を2回に分けるか、本数を減らしてほしいという希望を伝えた。I歯科医師はAさんの意向に従い、左下顎に4本、右下顎に1本のインプラント体を埋入する手術を行うことにした。
Aさんに対する手術は5月22日午後1時30分ころから始まった。I歯科医師は同1時54分頃から2時30分頃までに左下顎骨に4本のインプラント体を埋入した。
下顎の骨は外側が「皮質骨」という、比較的硬く、しっかりとした部分で覆われており、その内部に「海綿骨」という、骨髄が入っていて比較的軟らかい部分がある。I歯科医師は海綿骨部分でインプラント体を固定しようと考えた。そして、歯槽頂からまず直径2.5ミリメートルのドリルを、続いて直径3.2ミリメートルのドリルをそれぞれ用いて、インプラント体を入れる穴をつくるためのドリリングを行い、予定通り、皮質骨に到達する前の海綿骨の部分でドリリングを止めた。次に、その穴にインプラント体(直径4.1ミリメートル、長さ12ミリメートルのもの)をねじ込んだが、インプラント体が固定された状態とはならなかった。
そこで、I歯科医師は、海綿骨の先にある、「舌側」の皮質骨をわずかに穿孔し、これを利用して初期固定を得る方法を採ることにした。いったん入れたインプラント体を取り外し、直径2.5ミリメートルのドリルでさらにドリリングを進めて、舌側の皮質骨を意図的に穿礼した。その後、直径3.2ミリメートルのドリルで舌側の皮質骨までドリリングし、インプラント体の埋入窩をより深く形成した上で、再びインプラント体をねじ込んだ。
その後、I歯科医師は、埋入したインプラント体の上の部分に義歯を装着するためのアバットメントの取り付けを始めたが、その途中で、Aさんに異常な反応が見られたため、口の中を見ると、舌の下側の口腔底が盛り上がっていたことから、出血があったと考えた。インプラント体を取り外したところ、ドリリングした穴から出血があった。
I歯科医師が出血部分にガーゼをあて、両手の指で圧迫止血すると、1O分ほどで穴からの出血が止まった。そこで、再びインプラント体を埋入したところ、まもなく、Aさんがうなり声を上げて体をばたつかせ、やがて、その腕の力が抜けて垂れ下がった。
Aさんは午後4時頃、東京都中央区の聖路加国際病院に搬送され、さらなる救命措置を施されたが、手術翌日の5月23日午前9時18分頃死亡した。他の医療機関での手術中に容体が急変して死亡したケースであったため、聖路加国際病院は警視庁中央署にAさんの死亡を届けた。
Aさんの遺体は東京大学法医学教室の吉田謙一教授らによって司法解剖された。
Aさんの司法解剖を担当した東京大学法医学教室の吉田謙一教授と鶴見大学歯学部法医歯学研究室の佐藤慶太准教授は、Aさんの事故の1年後に開催された日本法歯科医学会第2回学術大会でAさんの事例を発表した。その内容をまとめた論文が、学会発表の翌年の2009年に発行された「日本法歯科医学会誌」に掲載された。
そこに記載された事故の問題点は以下のようなものであった。
これまでに発生した歯科医療関連死では刑事事件に発展したケースは少なくないが、刑事罰が科せられたものは僅かであり、それ以外の殆どが不起訴となっている。この理由の最たるところは、歯科診療所の医療水準が低く評されていることで、つまりは、歯科は医療水準が低いので危険予見や危険回避の義務を問えないということである。その結果、歯科診療所で発生した致命的事故は、患者を総合病院等に搬送さえすれば一義的な救命責任は果たしているようである。本件においても、担当歯科医師が執った救命行動は前述の範囲内であり、現況においては妥当性が否定されないものであろう。しかし、歯科医療関連死の多くが喉頭・咽頭の浮腫や血腫による気道閉塞等に伴う窒息が原因となっている状況を鑑みれば、外呼吸の主たる器官である口腔の疾患を担当する医療職として、将来的に歯科医師の救命スキルを格段に向上させる必要があろう。そのためには歯科界を挙げての画期的な研修体制等の構築が急務である。
インプラント術式の標準化を考究し、診療指針を作成する必要がある。本件に観られる術式(特に切削行為)は一般歯科医学の見識からは医学適応性に疑問を抱くが、歯科用インプラント術に関する専門的な学術性による判断が必要である。しかしながら、現在のところもインプラント術に関する確固たる治療指針を確認することができず、本件がそれにある標準術式の範囲内か否かを検証することはもはや不可能である。鈴木利廣弁護士は、歯科においては診療ガイドラインが充分に存在しないため、歯科医事紛争の複雑化を招いており、近年ではインプラント術に関する訴訟が増加している点を指摘している。早急に術式を整備して、医療安全を担保したインプラント診療指針を作成し、広く歯科界に周知を図る必要がある。
本件においては、術前のエックス線診断として歯科用CT撮影は実施されていない。敢えて、本件に観られる下顎骨の穿孔が偶発的に生じたものとして考えると、歯科用CT画像によって細密な骨の情報を得ていれば、不測の事態を回避できた可能性が高い。本件の診療所においては、歯科用CT撮影は対応可能な状況であったようだが、一般に、高額な歯科用CT撮影装置を導入している診療所は少ないのが現状である。関連学会はインプラント術における歯科用CT撮影の重要性について説いており、歯科界としては、CT画像の安価な供給を可能とする体制を検討する必要がある。
本件は、搬送先病院の担当医師によって異状死として警察に届出された。これは医師法21条に規定される検案を担当医師が実施し、その際に医療関連死としての異状を認識したことに基づく行動である。現在、厚生労働省が検討する「医療安全調査委員会設置法案大綱案」においては、診療所を含む全医療機関に対して、医療関連死が発生した場合の同委員会へ届出を義務付けている。診療所で発生した死亡事案の多くは搬送先病院で確認されると考えるが、同委員会への届出は当該医療を担当した歯科医師の診断責任の範疇にある
かも知れない。又同大綱案においては、診療所で発生した死亡事案は、地域等の専門職団体に相談等の体制を設けるよう記してあり、歯科界における対応について今から考究しておく必要がある。
吉田教授と佐藤准教授らはこの抄録の最後に、インプラント手術による事故死の再発防止に向けて、①現在実施されているインプラント術式の種類、分布の程度や事故事例に関する調査、②インプラント術式の標準化のための診療指針の策定と安全な術式の普及推進、③インプラント術者に対する安全医療及び救命医療の技術修得のための専門学会等の体制確保と定期的な評価の実施、④歯科用CT撮影の具体的な必要性の明確化と機器もしくは画像を供給しやすい体制の確保の検討の4点を提言した。
歯科インプラント手術死亡事故の教訓がいかされるよう歯科界全体で取り組んでいく必要がある。