中道歯科医院|富山市高木 むし歯 歯周病 入れ歯 訪問診療 小児歯科 英語対応可 Availble language:Einglish,Department of Dentistry,ToyamaCity
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2011年9月12日
平成23年9月院長のマンスリートーク ◆適正歯科医療費の考え方
政策を考える上で、現状の正確な分析が重要であり、このままの事態が続くと将来的に歯科医療が崩壊する危険性があり、緊急の課題となっている。
昭和56年診療報酬改定では医科8.4%に対し、歯科5.9%の改定率となり、医科歯科の改定率格差が始まった。この改定から、薬価引き下げ財源充当方式がとられ、薬剤比率が低い歯科には不利となった。昭和56年6月から平成9年4月までの16年間で診療報酬の改定が10回実施されたが、医科と歯科の改定率はきわめてアンバランスで、この期間の診療報酬改定率の累積値は医科が48.9%、歯科が23.4%で、歯科の引き上げ率は医科の半分以下で「歯科の失われた16年」と表現される。
改定率が同率となった平成11年以降、さらに厳しい状況が続いている。すなわち、歯科診療所では平成11年4,071万(平成8年が4,284万で最大値)から平成20年に3,803万と保険収入の減少傾向が続いている。一方、一般診療所は平成11年の8,216万から平成20年には8,557万と収入を増やしている。結果として、平成20年では歯科の保険収入は医科の44%しかない異常な事態となっている(表参照)。
表 一般診療所と歯科診療所の年間保険収入比較
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望ましい診療報酬の条件としては、①医療サービスの提供に要するコストが適切に補填されること、②医療の質およひ効率性を向上させる努力が適正に評価されること、③できるだけ簡素で事務処理の負担が少ないこと、の3つが挙げられ(島崎)、保険収入が減少していることはコストが適切に補填されていないことを意味する。「医療機関のコスト増から医療費の自然増を差し引けば足りる」とされる中で、歯科の自然増はマイナスである。
あるべき姿委員会報告書で適正歯科医療費が3つ示されたが、①歯科の収支差額(所得)が医科(無床)と同じということはありえず、経費を据え置いての計算は現実的ではない。②GDPとの比較で国民医療費が1.3倍に増えるという事は財政が厳しい中で考えにくい。③技術料評価の考え方は正しいが、歯科医師の適正賃金の妥当性の評価が問題となり、3つとも適正歯科医療費とは程遠い数値となっている。
コストに見合った診療報酬という考え方は正しいが、現実的かつ実益性の高い方法を採るべきである。具体的には、①医科・歯科・調剤間、②病院・診療所間、③入院・外来間、④診療科間、⑤医療行為間、に分け、①から③については、中医協「医療経済実態調査」等のデータに基づきコスト構造の相違や収益率の分析を行い配分の妥当性を検証し、その上で、④については医療機間の診療科部門別収支に関する調査、⑤については関係学会の実証データに基づき点数間の是正を図ることが適切である(島崎)。
現行の新医療費体系は技術料を適正に評価することを目的とするが、当初、歯科診療所は一般診療所の63%に決められており、適正歯科医療費としては、一般診療所の63%で計算して3兆6,500億円(8,557万X0.63X67,779=3兆6,539億円)、理想的(一般診療所の有床の減少や調剤の増加を考慮)には70%の約4兆円となる。
医師・歯科医師の所得バランスは、教育に要する金額、医療職の給与比較、収入の国際比較、診療所の資産・負債額、設備投資額等が参考になるが、6割以下はあり得ない数値である。
参考:島崎謙治著 日本の医療−制度と政策−(東京大学出版 2011.4.27)
「制度」とは「一定のまとまりをもったルールの集合体」であると定義する。
医療制度は、医療サービスの供給に関する医療供給制度と費用の調達・財政に関する医療保険制度の2つに分けられる。
医療機関の経営は診療報酬の価格設定(診療報酬点数)に大きく左右されるため、医療供給制度に深く関わっている。
医療制度は複雑系であり、医療政策は多元連立方程式を解くのと似たような面がある。
「政策」とは、「特定の価値観に基づきあるべき方向(目的)を目指し、現状の問題点を改善するための手段・方法」と定義する。
政策とは制度を変えることであるといってもほぼ差し支えない。「現状の問題点」の大半は、現行のルール(のまとまり)が何らかの不具合を起こしており、それを改めるのが政策だからである。
「診療報酬をめぐる課題」(P367-P373)
診療報酬は最も有力な医療供給の改革手法であるが、即効性が高い反面、副作用も小さくない。望ましい診療報酬の条件としては、①医療サービスの提供に要するコストが適切に補填されること、②医療の質およひ効率性を向上させる努力が適正に評価されること、③できるだけ簡素で事務処理の負担が少ないこと、の3つが挙げられるが、適正条件を抽象的に論じることに意味があるわけではない。具体的な課題・論点として重要な点を4つに絞り述べる。
第1は、医療機関の機能に対応した診療報酬体系のあり方である。2003年3月に閣議決定された基本方針中の「診療報酬体系の基本的な考え方」である。主な論点は3つある。
1つは、DPCによる包括支払い、2つ目は、一般病床のうち回復期リハビリ病床を含む亜急性期病床の診療報酬のあり方、3つ目は、外来の診療報酬である。
第2は、医療機関のコストの評価のあり方である。実際のコストと乖離した診療報酬点数が設定されれば、不採算分野は抑制され採算性の高い分野に集中するといったバイアスが生じる。したがって、コストに見合った点数設定は重要であるが、2つ留意すべきことがある。1つは、ドクターフィーやホスピタルフィーに「的」という言葉が付されている意味である。医業費用は、A:変動費とB:固定費に分けられ、さらに、Aの変動費は、医師の人件費(A-1)、医師以外の人件費(A-2)、物件費(A-3)に、Bの固定費は医療機器(B-1)、土地・建物(B-2)に分けられる。わが国は民間立病院が多いため医業費用全体が診療報酬の対象となっている。日本ではドクターフィーを別建てにする必然性はない。診療報酬は医療機関に帰属し、その後の配分は基本的に医療機関内部の問題である。2つ目は、原価に見合った診療報酬体系の構築は容易ではないことである。たとえば、基本診療料の中で資本コストやオペレーションコスト(人件費や材料費の維持菅理・運営費)がどのように評価されているか明確化すべきだという議論があるか(2010年9月29日中医協総会における診療側意見書)、これらのコストは基本診療料だけに含まれているわけではなく、診療報酬点数すべてを洗い直す作業が必要になる。さらに、適正な原価とは何かという問題もある。新医療費体系が創設された際、原価計算の議論が中途半端に終わった理由の1つは、医師の適正賃金(例;一般労働者の何倍とするか)に関し合意が得られなかったことにある。結論としていえば、コストに見合った診療報酬という考え方は正しいが、現実的かつ実益性の高い方法を採るべきである。具体的には、①医科・歯科・調剤間、②病院・診療所間、③入院・外来間、④診療科間、⑤医療行為間、に分け、①から③については、中医協「医療経済実態調査」等のデータに基づきコスト構造の相違や収益率の分析を行い配分の妥当性を検証し、その上で、④については医療機間の診療科部門別収支に関する調査、⑤については関係学会の実証データに基づき点数間の是正を図ることが適切である。
第3は、包括支払いに対応した妥当適切性の確保である。包括支払いのウェイトが高まっていながら、質の管理および監査の仕組みの検討が行われていないことである。
第4は、診療報酬改定のルールであり、次の3点の検討が必要だと考えている。1つは、現行の2年ごとの改定を3年ごとに改めることである。現状では、データの収集・解析や中医協の審議日程が窮屈であることに加え、改定の関係告示・通知の発出と施行の期間が短いため医療機関や審査支払機関の電算システムの変更エラーの多発を招いている。①医療費の総額管理、②医療費のセクター配分、③医療機関の政策誘導、の3つの機能をすべて点数改定により同時に処理している。
参考:日本歯科医師会監修 歯科医療白書 2008年度版の菊地隆俊論文より
●歯科医師所得の低下は政府の失敗か(P78)
2007年の歯科開業医所得は1,475万円で、医科開業医(無床)所得を100とすると54.6の絶対的ともいえる低水準である。1955年度以降の医療費データの歴史的、長期的な観察から判明したことは、この大きな所得格差を生みだしたのが、歯科医療費の入院外医療費に対する相対的劣位ではなかったのか。55年度を基準年次とするこの半世紀の間に、入院外医療費は62.9倍にも高騰する「ハイパー・インフレ」だったが、これに対し歯科医療費は28.6倍の水準にとどまっている。
経済学の論理で考えると、この価格格差が自由市場で形成されたものであれば、歯科医師に異論の余地はないだろう。歯科医療サービスに対する需要と供給の交差点で定まる均衡価格が適正価格であり、それが市場の審判だからである。
しかし、日本の医療市場は公共化された市場であり、医療サービス価格は政府によって厳しく規制されている。この考え方に立つと、歯科医療費の価格劣位は政府が主導して生成し、その結果、歯科医師所得が抑制され、多くの歯科医師がワーキング・プアに転落していくことにもなる。
医療経済の実証的、理論的分析も十分に行わず、主として政治主導で診療報酬改定を押し進めざるを得なかった政府の失敗も指摘できよう。今後に期待される歯科医師所得改善などの医療経済の構造改革は、「歴史的」な観点に立った医療費データの冷静な分析を出発点とすべきことをここでの提言としたい。
●所得の公正化、公平化を目指して(P163)
医師・歯科医師の所得バランスがいかにあるべきかは難しい経済問題である。日本の医療市場は需要は公共化(国民皆保険)、供給は自由化(自由開業医制)という特異な市場構造である。その意味では医師・歯科医師所得も経済学でいう自由市場で形成されたものでなく、種々の規制が所得形成に歪みをもたらす可能性は否定できない。「自由市場において形成される所得が適正である」という経済学のパラダイムにそって物事を考えれば、アメリカの例が参考となる。
内国歳入庁の1992年所得データでは、医科開業医所得8万7,000ドルに対し歯科開業医所得は7万3,1OOドルである。その所得バランスは100対84で、日本のような大きな所得アンバランスは存在していない。
現在のわが国における医師、歯科医師の所得アンバランスを「制度」が作りだしたものとすれば問題である。歯科医師過剰はそもそも国がつくり出したものだし、絶対的技術評価が低い歯科診療点数も国が決めたものである。その結果、生じている医師、歯科医師の所得アンバランスを是正する補償責任は国が負うべきであろう。
国民経済の視点からいえば、医師、歯科の間に調和のとれた制度であることが望ましい。医療サービスの主要な担い手である医師、歯科医師の所得のあり方についても、「公正」の尺度に立った政策判断が必要とされる。「公正」のテスト基準としては、①医師、歯科医師に所得稼得の公正な機会が与えられているか、②医療サービスの貢献度を評価する技術料のバランスは、医師、歯科の間で適切か、③保険医療サービスを行いながら、底辺の歯科医師所得はあまりにも低水準(月額15万7,000円)であることは社会正義に反しないか−などが考えられる。
改めて指摘するまでもないことだが、最近急激に進行している医師・歯科医師の所得アンバランスは特に好ましくない。
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改定率が同率となった平成11年以降、さらに厳しい状況が続いている。すなわち、歯科診療所では平成11年4,071万(平成8年が4,284万で最大値)から平成20年に3,803万と保険収入の減少傾向が続いている。一方、一般診療所は平成11年の8,216万から平成20年には8,557万と収入を増やしている。結果として、平成20年では歯科の保険収入は医科の44%しかない異常な事態となっている(表参照)。