中道歯科医院|富山市高木 むし歯 歯周病 入れ歯 訪問診療 小児歯科 英語対応可 Availble language:Einglish,Department of Dentistry,ToyamaCity
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2019年4月22日
平成31年4月院長のマンスリートーク◆歯科の平成30年を振り返る−失敗の本質−
平成31年4月院長のマンスリートーク◆歯科の平成30年を振り返る−失敗の本質−
平成最後のお知らせ(コラム)は歯科の平成30年をこれまで書いてきたことを中心に簡単に振り返ってみたい。30年を実証分析すると次の3つに分けられる。すなわち、
①診療報酬の不合理改定による歯科医療の低成長期(平成元年〜平成9年)
医科歯科の不合理な改定率格差が行われ、医療費の伸びが抑えられた時期。
②戦略の失敗と医療費抑制による歯科医療の崩壊期(平成10年〜平成19年)
かかりつけ歯科医初診料制定の失敗と医療費の抑制により崩壊寸前までになった時期。
③反省とエビデンスに支えられた歯科医療の出直り低成長期(平成20年〜平成31年)
最悪期を抜け出し、エビデンスに支えられ歯科再生にやや希望が見えてきた時期。
①診療報酬の不合理改定による歯科医療の低成長期(平成元年〜平成9年)
昭和56年診療報酬改定では医科8.4%に対し、歯科5.9%の改定率となり、医科歯科の改定率格差が始まった。この改定から、薬価引き下げ財源充当方式がとられた。つまり物価・人件費の変動への対応ではなく、薬価基準引き下げ財源が主たる診療報酬改定の財源となったのである。薬価引き下げ財源充当方式による改定は、薬剤比率が低い歯科には不利となり、昭和56年6月から平成9年4月までの16年間で診療報酬の改定が10回実施されたが、医科、歯科の改定率はきわめてアンバランスとなった。この期間の診療報酬改定率の累積値を計算すると医科が48.9%、歯科が23.4%で、歯科の引き上げ率は医科の半分以下の水準という惨状となり、「歯科の失われた16年」と表現される(表1)。
当時の山崎日本歯科医師会長が医師会の申し出に、あまり考えることもなく、改定率格差に軽く合意していたのである。80年代以後の診療報酬体系をゆがめた責任は、当時の歯科医師会長の軽い気持ちでの合意−結果的には組織の関係者としての独断的行動−にあると中医協委員を努めた伊東光晴氏は述べた。この結果、新技術の導入によって医療費を増大させる医師会とは対照的に、歯科診療報酬は停滞し続けたのである。
日本歯科医師会が監修した「歯科医療白書2008年度版−持続可能な歯科医療社会を目指して」の中で、菊地隆俊氏(財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会参与)は、「多くの歯科医師がワーキング・プアに転落していくことは、医療経済の実証的、理論的分析も十分に行わず、主として政治主導で診療報酬改定を押し進めざるを得なかった政府の失敗も指摘される。経営安定のために、医療サービスの提供に必要な原価(適正利益を含む)を補償するという大原則、医師・歯科医師所得の公正な所得確保を目指すという診療報酬改定の基本的精神が全く守られていない」と述べているが、まさに至言である。
昭和58年から平成9年までの各種年平均伸び率は国民所得3.8%、国民医療費5.0%、歯科医療費3.6%、昭和58年から平成9年までに歯科診療所の数が41,616から60,579(年平均増加率2.5%)と増えたので、1歯科診療所当たりの収入は、昭和58年から平成9年まで年平均増加率は1.1%と低成長であった。
それでも、平成元年の歯科医療費19,617億円が平成9年には25,344億円まで伸びたのは、平成4年の前装冠単冠の保険導入や平成8年の歯周疾患ガイドラインの導入、補綴物維持管理料の新設、在宅歯科医療の評価によるものであった。医科歯科の改定率の格差がなければ、1歯科診療所の年間保険収入は5千万を超えていたはずである(表2)。
②戦略の失敗と医療費抑制による歯科医療の崩壊期(平成10年〜平成19年)
平成10年改定は+1.5%であったが、歯科初診料が175→186点、歯科再診料を36→38点と改定の43%が使われたが、医科初診料は250→270点となったため84点も差が開いた。そこで、初診料の医科歯科格差是正のために平成12年改定(+2.0%)で、かかりつけ歯科医初診料を270点、かかりつけ歯科医再診料を40点で全体の3/4を使ったが、患者の同意を得て、病名、症状、治療内容および治療期間等に関する治療計画を策定し、患者に対しその内容についてスタディモデルまたは口腔内写真を用いて説明した上で、文書による情報提供を行う算定条件が厳しく制限されたため、思うほど頻度が伸びなかった。
その後、平成14年、小泉政権下における史上初のマイナス1.3%(歯周疾患継続指導管理料や補綴物維持管理料の値下げ)、また平成16年±0%(金パラ価格の大幅値下げでマイナス1%)へと続き対前年保険収入の大幅ダウンが始まった。
そして、平成16年4月、東京地検特捜部が日歯会長の臼田貞夫ら5人を贈賄容疑で、健保連副会長で中医協委員だった下村健容疑者ら2人を収賄容疑で逮捕するという悲劇が起きた。さらに日歯連盟の2001年度の収支報告書に旧橋本派への1億円(小切手)の支出を記載しなかったことで社会問題化した。かかりつけ歯科医初再診料制定の失敗である。
平成18年の改定もマイナス1.5%であったが、事件の影響を受け、かかりつけ歯科医初再診料が廃止され、歯科初診料を180点に、歯科再診料を38点に大幅減点という屈辱的改定で歯科医療崩壊が叫ばれた。
平成10年から18年までの各種年平均伸び率は、国民所得−0.2%、国民医療費1.5%、歯科医療費−0.1%という結果で、歯科医療費の伸びは国民医療費に比べ年率換算で1.5%程度低い。
平成10年から18年までに歯科診療所の数が61,747が67,392(年平均増加率1.2%)と増加したので、1歯科診療所当たりの収入は、平成10年から18年まで年平均減少率▲1.3%となり、四半世紀の間の収入の伸びはゼロに等しい。1歯科診療所の年間収入はピ−クから約700万弱も減少した。
それでも、 12歳児のDMF歯数が昭和56年に5.43本であったものが、平成20年には1.54本となったように、各年代で、う蝕は減少、軽症化(厳密には遅延化)するなど、厳しい診療報酬改定の中、国民に良質な歯科医療サ−ビスが提供されてきた。
③反省とエビデンスに支えられた歯科医療の出直り低成長期(平成20年〜平成31年)
平成20年改定0.42%で、歯科初診料は180→182点に、歯科再診料は38→40点なり、続く平成22年改定2.09%で、歯科初診料は182→218点に、歯科再診料は40→42点となった。平成22年改定から、歯科の改定率が医科のそれを上回ることとなった。
平成24年改定1.7%、平成26年0.99%、平成28年0.61%、平成30年0.69%と続いた。平成27年9月30日、東京地検特捜部は日歯会長の高木幹正ら3人を政治資金規正法違反(収支報告書の虚偽記載) 容疑で逮捕したが、報復的処置は今回はなかった。
平成19年に24,996億円だった歯科医療費は平成28年には28,574億円(29年は概算で29,152億円)と10年で約4,000億円増えた。診療報酬改定のない年も歯科医療費が増えるようになってきた。年齢階級別では0~14歳と65歳以上(特に75歳以上)での患者数の増加が著しい。1人あたり歯科医療費の多い65歳以上の患者の増加が全体の歯科医療費を伸ばしている。
受診延日数は4.12億日から4.18億日と少しずつ増加、1日あたり医療費も6.1千円から平成27年には6.7千円と増えて全体の医療費が伸びた。現場の努力の賜物である。
最近、口腔と全身の健康との関係が明らかになってきている。口腔機能(咬合、咀嚼、唾液分泌、構音、嚥下)の低下は、認知症や全身的な疾患あるいは運動機能、生活機能とも密接に関連しており、歯数保持によって寿命が延伸する。糖尿病、誤嚥性肺炎、がん、循環器疾患および肥満との関係もはっきりしている。良好な口腔の健康状態は、将来の要介護状態の発生を低くし、周術期術後肺炎のリスクを軽減させるなどエビデンスも、高齢者を歯科へ向かわせる要因になっている。
ここ十年余の診療報酬改定をみると、現場の声を反映して、現場がやる気が出る内容のときは医療費が増えてきた。平成20年以降、日本歯科医学会が厚生労働省に提出している「医療技術評価提案書」から保険導入されたものが多くなってきている。学会のタイムスタディー調査結果を踏まえた点数の増減も評価できる。
医科歯科格差がある診察料を複雑化させている動きは評価に値しないが、最終的には初診料と再診料は医科並にしなければならない。同一労働同一賃金(歯科の1分当たり技術料は医科の半分以下という異常事態)の原則にも合致するものである。歯科を特別視するようなやり方には断固反対すべきである。基本とすべき価値観・判断基準は公平・公正である。4兆円という適正歯科医療費を妥当性のあるものとして提案してきたが、地道な努力の積み重ねで実現を図っていくべきであろう。
質の高い歯科医療には質の高い義歯やブリッジ等の補綴物が必要であり、それを作製する歯科技工士の役割が大きい。しかしながら、歯科技工所の経営状態はきわめて厳しいものがあり、その中で国民の歯の健康保持に応え続けなければならないのが実情である。歯科技工士の状況は歯科医師よりさらに危機的な状況にある。世界でも、“トップクラス”との評価を受ける技工士の能力が何とか、報われる制度作りが急務となっている。
歯科医師数は「過剰」と言っていたが、最近は診療所数があまり増えない中、かなりいい数値(1日患者数25人、年間保険収入4千万円)に収束している。内部には問題を残しながらも、この先20年位は患者数はわずかに減少するものの、収入が対前年マイナスになることがないと予測されている。医師より収入は少ないものの、女性歯科医師が増えてくる(将来的に約4割)中、ワークライフバランス(仕事と生活の調和)がとれる職業として見直されるべきである。難問を増やし、新卒受験者の得点分布を踏まえた相対基準で行っている歯科医師国家試験は正常な資格試験に戻すことも急がなければならない。
平成の30年間を振り返ると、日本歯科医師会長の独断的行動や社会的問題行動によって(日歯会長が2人も逮捕された)会員は20年間も苦しみ続けてきた。やっと、回復途上にあるものの、歯科界をもっと明るい未来がある業界とするためには、会のトップに立つ人間は科学的データに基づき英知を絞って行動する(戦略や目的の明確化)ことが求められる。合掌。
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恩師総山孝雄(ふさやまたかお)先生の教え
いつも、総山先生の教えを守るよう治療に当たっています。
富山県内での産業歯科保健事業からの成果を踏まえて
院長は、この事業の設立時から中心的役割をにない一定の成果を出しました。
かかりつけ歯科医の役割
年に1回は必ず「かかりつけ歯科医」で健診することが重要と考えます。
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①診療報酬の不合理改定による歯科医療の低成長期(平成元年〜平成9年)
医科歯科の不合理な改定率格差が行われ、医療費の伸びが抑えられた時期。
②戦略の失敗と医療費抑制による歯科医療の崩壊期(平成10年〜平成19年)
かかりつけ歯科医初診料制定の失敗と医療費の抑制により崩壊寸前までになった時期。
③反省とエビデンスに支えられた歯科医療の出直り低成長期(平成20年〜平成31年)
最悪期を抜け出し、エビデンスに支えられ歯科再生にやや希望が見えてきた時期。
①診療報酬の不合理改定による歯科医療の低成長期(平成元年〜平成9年)
昭和56年診療報酬改定では医科8.4%に対し、歯科5.9%の改定率となり、医科歯科の改定率格差が始まった。この改定から、薬価引き下げ財源充当方式がとられた。つまり物価・人件費の変動への対応ではなく、薬価基準引き下げ財源が主たる診療報酬改定の財源となったのである。薬価引き下げ財源充当方式による改定は、薬剤比率が低い歯科には不利となり、昭和56年6月から平成9年4月までの16年間で診療報酬の改定が10回実施されたが、医科、歯科の改定率はきわめてアンバランスとなった。この期間の診療報酬改定率の累積値を計算すると医科が48.9%、歯科が23.4%で、歯科の引き上げ率は医科の半分以下の水準という惨状となり、「歯科の失われた16年」と表現される(表1)。
当時の山崎日本歯科医師会長が医師会の申し出に、あまり考えることもなく、改定率格差に軽く合意していたのである。80年代以後の診療報酬体系をゆがめた責任は、当時の歯科医師会長の軽い気持ちでの合意−結果的には組織の関係者としての独断的行動−にあると中医協委員を努めた伊東光晴氏は述べた。この結果、新技術の導入によって医療費を増大させる医師会とは対照的に、歯科診療報酬は停滞し続けたのである。
日本歯科医師会が監修した「歯科医療白書2008年度版−持続可能な歯科医療社会を目指して」の中で、菊地隆俊氏(財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会参与)は、「多くの歯科医師がワーキング・プアに転落していくことは、医療経済の実証的、理論的分析も十分に行わず、主として政治主導で診療報酬改定を押し進めざるを得なかった政府の失敗も指摘される。経営安定のために、医療サービスの提供に必要な原価(適正利益を含む)を補償するという大原則、医師・歯科医師所得の公正な所得確保を目指すという診療報酬改定の基本的精神が全く守られていない」と述べているが、まさに至言である。
昭和58年から平成9年までの各種年平均伸び率は国民所得3.8%、国民医療費5.0%、歯科医療費3.6%、昭和58年から平成9年までに歯科診療所の数が41,616から60,579(年平均増加率2.5%)と増えたので、1歯科診療所当たりの収入は、昭和58年から平成9年まで年平均増加率は1.1%と低成長であった。
それでも、平成元年の歯科医療費19,617億円が平成9年には25,344億円まで伸びたのは、平成4年の前装冠単冠の保険導入や平成8年の歯周疾患ガイドラインの導入、補綴物維持管理料の新設、在宅歯科医療の評価によるものであった。医科歯科の改定率の格差がなければ、1歯科診療所の年間保険収入は5千万を超えていたはずである(表2)。
②戦略の失敗と医療費抑制による歯科医療の崩壊期(平成10年〜平成19年)
平成10年改定は+1.5%であったが、歯科初診料が175→186点、歯科再診料を36→38点と改定の43%が使われたが、医科初診料は250→270点となったため84点も差が開いた。そこで、初診料の医科歯科格差是正のために平成12年改定(+2.0%)で、かかりつけ歯科医初診料を270点、かかりつけ歯科医再診料を40点で全体の3/4を使ったが、患者の同意を得て、病名、症状、治療内容および治療期間等に関する治療計画を策定し、患者に対しその内容についてスタディモデルまたは口腔内写真を用いて説明した上で、文書による情報提供を行う算定条件が厳しく制限されたため、思うほど頻度が伸びなかった。
その後、平成14年、小泉政権下における史上初のマイナス1.3%(歯周疾患継続指導管理料や補綴物維持管理料の値下げ)、また平成16年±0%(金パラ価格の大幅値下げでマイナス1%)へと続き対前年保険収入の大幅ダウンが始まった。
そして、平成16年4月、東京地検特捜部が日歯会長の臼田貞夫ら5人を贈賄容疑で、健保連副会長で中医協委員だった下村健容疑者ら2人を収賄容疑で逮捕するという悲劇が起きた。さらに日歯連盟の2001年度の収支報告書に旧橋本派への1億円(小切手)の支出を記載しなかったことで社会問題化した。かかりつけ歯科医初再診料制定の失敗である。
平成18年の改定もマイナス1.5%であったが、事件の影響を受け、かかりつけ歯科医初再診料が廃止され、歯科初診料を180点に、歯科再診料を38点に大幅減点という屈辱的改定で歯科医療崩壊が叫ばれた。
平成10年から18年までの各種年平均伸び率は、国民所得−0.2%、国民医療費1.5%、歯科医療費−0.1%という結果で、歯科医療費の伸びは国民医療費に比べ年率換算で1.5%程度低い。
平成10年から18年までに歯科診療所の数が61,747が67,392(年平均増加率1.2%)と増加したので、1歯科診療所当たりの収入は、平成10年から18年まで年平均減少率▲1.3%となり、四半世紀の間の収入の伸びはゼロに等しい。1歯科診療所の年間収入はピ−クから約700万弱も減少した。
それでも、 12歳児のDMF歯数が昭和56年に5.43本であったものが、平成20年には1.54本となったように、各年代で、う蝕は減少、軽症化(厳密には遅延化)するなど、厳しい診療報酬改定の中、国民に良質な歯科医療サ−ビスが提供されてきた。
③反省とエビデンスに支えられた歯科医療の出直り低成長期(平成20年〜平成31年)
平成20年改定0.42%で、歯科初診料は180→182点に、歯科再診料は38→40点なり、続く平成22年改定2.09%で、歯科初診料は182→218点に、歯科再診料は40→42点となった。平成22年改定から、歯科の改定率が医科のそれを上回ることとなった。
平成24年改定1.7%、平成26年0.99%、平成28年0.61%、平成30年0.69%と続いた。平成27年9月30日、東京地検特捜部は日歯会長の高木幹正ら3人を政治資金規正法違反(収支報告書の虚偽記載) 容疑で逮捕したが、報復的処置は今回はなかった。
平成19年に24,996億円だった歯科医療費は平成28年には28,574億円(29年は概算で29,152億円)と10年で約4,000億円増えた。診療報酬改定のない年も歯科医療費が増えるようになってきた。年齢階級別では0~14歳と65歳以上(特に75歳以上)での患者数の増加が著しい。1人あたり歯科医療費の多い65歳以上の患者の増加が全体の歯科医療費を伸ばしている。
受診延日数は4.12億日から4.18億日と少しずつ増加、1日あたり医療費も6.1千円から平成27年には6.7千円と増えて全体の医療費が伸びた。現場の努力の賜物である。
最近、口腔と全身の健康との関係が明らかになってきている。口腔機能(咬合、咀嚼、唾液分泌、構音、嚥下)の低下は、認知症や全身的な疾患あるいは運動機能、生活機能とも密接に関連しており、歯数保持によって寿命が延伸する。糖尿病、誤嚥性肺炎、がん、循環器疾患および肥満との関係もはっきりしている。良好な口腔の健康状態は、将来の要介護状態の発生を低くし、周術期術後肺炎のリスクを軽減させるなどエビデンスも、高齢者を歯科へ向かわせる要因になっている。
ここ十年余の診療報酬改定をみると、現場の声を反映して、現場がやる気が出る内容のときは医療費が増えてきた。平成20年以降、日本歯科医学会が厚生労働省に提出している「医療技術評価提案書」から保険導入されたものが多くなってきている。学会のタイムスタディー調査結果を踏まえた点数の増減も評価できる。
医科歯科格差がある診察料を複雑化させている動きは評価に値しないが、最終的には初診料と再診料は医科並にしなければならない。同一労働同一賃金(歯科の1分当たり技術料は医科の半分以下という異常事態)の原則にも合致するものである。歯科を特別視するようなやり方には断固反対すべきである。基本とすべき価値観・判断基準は公平・公正である。4兆円という適正歯科医療費を妥当性のあるものとして提案してきたが、地道な努力の積み重ねで実現を図っていくべきであろう。
質の高い歯科医療には質の高い義歯やブリッジ等の補綴物が必要であり、それを作製する歯科技工士の役割が大きい。しかしながら、歯科技工所の経営状態はきわめて厳しいものがあり、その中で国民の歯の健康保持に応え続けなければならないのが実情である。歯科技工士の状況は歯科医師よりさらに危機的な状況にある。世界でも、“トップクラス”との評価を受ける技工士の能力が何とか、報われる制度作りが急務となっている。
歯科医師数は「過剰」と言っていたが、最近は診療所数があまり増えない中、かなりいい数値(1日患者数25人、年間保険収入4千万円)に収束している。内部には問題を残しながらも、この先20年位は患者数はわずかに減少するものの、収入が対前年マイナスになることがないと予測されている。医師より収入は少ないものの、女性歯科医師が増えてくる(将来的に約4割)中、ワークライフバランス(仕事と生活の調和)がとれる職業として見直されるべきである。難問を増やし、新卒受験者の得点分布を踏まえた相対基準で行っている歯科医師国家試験は正常な資格試験に戻すことも急がなければならない。
平成の30年間を振り返ると、日本歯科医師会長の独断的行動や社会的問題行動によって(日歯会長が2人も逮捕された)会員は20年間も苦しみ続けてきた。やっと、回復途上にあるものの、歯科界をもっと明るい未来がある業界とするためには、会のトップに立つ人間は科学的データに基づき英知を絞って行動する(戦略や目的の明確化)ことが求められる。合掌。