中道歯科医院｜富山市高木　むし歯　歯周病　入れ歯　訪問診療　小児歯科　英語対応可 Availble language：Einglish,Department of Dentistry,ToyamaCity

　新年が明けてすぐに、１月11日、厚生労働省は国の基幹統計である「毎月勤労統計」を不適切に調査したことを発表した。この統計をもとに給付水準が決まる雇用保険や労災保険、船員保険、事業主向け助成金の給付額が本来よりも少なかった人が延べ２千万人、過少支給額が564億円に上る。信じがたい不正行為で、行政に対する信頼を揺るがす事態となっている。不正は2004年から長期にわたって行われていたというから始末が悪い。この統計結果はＧＤＰや景気判断に影響を与える重要なものである。
　「毎月勤労統計」は従業員５人以上の事業所が対象で、500人未満は抽出､ 500人以上はすべての事業所を調べることになっているが、東京都では500人以上の約３割約500事業所しか調査していなかった。こうして得られたデ−タの賃金は実際より低く出ていた。
　統計法の目的は、公的統計の作成及び提供に関し基本となる事項を定めることにより、公的統計の体系的かつ効率的な整備及びその有用性の確保を図り、国民経済の健全な発展及び国民生活の向上に寄与することとなっている。「基幹統計」と「一般統計」がある。
　「基幹統計」は国の国勢統計、国民経済計算、その他国の行政機関が作成する統計のうち総務大臣が指定する特に重要な統計を「基幹統計」として位置づけ、この統計を中心として公的統計の体系的整備を図ることとしている。平成29年４月現在、基幹統計は56統計あり、厚生労働省関係では、毎月勤労統計の他、人口動態統計、薬事工業生産動態調査、医療施設統計、患者統計、賃金構造基本統計、国民生活基礎統計、生命表、社会保障費用統計がある。
　基幹統計調査は、公的統計の中核となる基幹統計を作成するための特に重要な統計調査であり、正確な統計を作成する必要性が特に高いことなどを踏まえ、一般統計調査にはない特別な規定が定められている。
　基幹統計調査に対する正確な報告を法的に確保するため、基幹統計調査の報告(回答)を求められた者が、報告を拒んだり虚偽の報告をしたりすることを禁止しており、これらに違反した者に対して、50万円以下の罰金が定められている。被調査者の情報を保護するとともに、公的統計制度に対する公共の信用を確保するため、基幹統計調査について、その調査と紛らわしい表示や説明をして情報を得る行為を禁止しており、これに違反した者に対して、未遂も含めて２年以下の懲役又は100万円以下の罰金が定められている｡
　また、基幹統計調査は、全数調査や大規模な標本調査として行われるなど、被調査者の数が非常に多く、国の担当職員だけで、限られた期間内に調査を円滑に終えることは困難であるため、調査事務の一部を法定委託事務として地方公共団体が行うことができるとされている。
　ところで、他の基幹調査で不適切なものがないのか。わたしは10年以上前から患者統計(調査)のうち歯科診療所の１日推定患者数が実態とかなり乖離していることを指摘続けてきた（図１−日歯調査室調査第一部会「歯科医業経営の将来予測」平成18年１月−委員長は私）。
　また、図２と３は２年半前に日本歯科評論に載せた昭和32年から平成26年までの１日の歯科診療所推定患者数と１歯科診療所の１日患者数であるが患者統計(調査)と保険実数（社会保障統計年報より計算）のグラフであるが、患者統計(調査)はかなり少なく出ている｡
　日本歯科医師会は、この患者統計(調査)をもとに、あるべき歯科医師数81,641人、あるべき歯科診療所数54,000としているが、実際より18％も少なく計算されているのに、異議を唱える人はわずかで、相変わらず歯科医師は過剰であるという見解に立っている。
　もう過剰ではないということは２年半前に日本歯科評論に発表したが反応はいまいちである。正しい統計(全数調査)があればそちらの数値でものを考えるべきであることは論を待たない （表１）。あるべき歯科医師数は100,498人、あるべき歯科診療所数は67,088である。
　共同通信社が１月12日、13日に行った全国電話世論調査で、政府統計を｢信用できない｣との回答が78.8％に達したという。国は政策立案の根拠となる公的統計を体系的・効率的に整備する必要に迫られており、猛省しなければならない｡